空っ風(からっかぜ)
一般的な話より、まず、いわきに特徴的な二つことから。一つは空っ風で、もう一つは痩せた土。情報を発信する場所の違いでしょうか、園芸書や造園の本ではいまだそのことを取り上げたものを見たことがありません。で、今回は、空っ風について。
「上州名物。かかぁ天下(殿下?)と空っ風」という言葉がありますが、いわきの空っ風も負けてはおりません(かかぁ天下はノーコメントですが)。冬型の気圧配置の時、日本海側からの湿った空気が山にあたって日本海側に雪を降らせ、太平洋側には冷たく乾いた強い風が吹き付けます。 だいたい、北西の風。特に、両側から山が迫った銚子口となっている場所(お酒のお銚子のくびれに見立てた場所)の風下側は、強い空っ風が吹きつけ、銚子口に迫っている山の名前を取って「・・下ろし」などと名前がついているくらいです(例えば、上州の赤城下ろしとか、いわきなら閼伽井岳下ろしとか)。 自然地形ばかりではなく、ビルなどの建物も銚子口の役割をすることがあります。また、ビルを巻き返す風が北西以外の方向から強く吹いたりと、狭い範囲ではかなり複雑な風になります。
では、この空っ風が植物の生育にどのように影響するのでしょうか。
まずは、その冷たさ。落葉樹では特に問題ではありませんが、常緑樹は冬でも葉をつけているので、葉の中の水分が凍ってしまうと枯れてしまいます。冬場の植物は、自分の水分を少なくして凍りにくくしていますが、 草も木も、常緑で葉の柔らかいものは、その冷たさでやられてしまいます。
次は湿度。洗濯物は良く乾く風ですが、極端に湿度が低い空っ風は、触れるもの全てから水分を奪い去ってしまいます。 常緑樹でも、針葉樹は葉が風に当たる面積が小さいので耐えられますが、広葉樹は、乾風の影響をまともに受けてしまいます。 苗木のうちからその環境で育ったものはある程度は適応しますが、 すこしは大きくなったものを庭に植える場合は、適性をチェックしなくてはいけません。 例えば、強い空っ風が当たる場所は、塀などの植物以外の配置を考えるとか、植物でも落葉樹、あるいは常緑樹なら、針葉樹や葉の細かい広葉樹にするとか。
それから、乾いた風は、植物から直接水分を奪うだけでなく、足元の土からも水分を奪います。 寒い朝は霜柱が立ちますが、霜柱は地中の水分を地表に吸い上げます。その霜柱が日中に溶けて、乾いた空気に吸い込まれて...これを繰り返して、土の中はカラカラになってしまいます。土の中には植物の根を湿らせる水分は少なく、常緑樹の場合、葉からは水分を奪い去られ、かなり過酷な状況になります。 植物の選定だけでなく、土の状態を良く保つ工夫や、場合によっては葉から水分が奪われるのを防ぐ工夫が必要になる場合もあります。
でもね、庭の中には冬でも枯れない常緑樹がたくさんあるし、周りの山には、人間が何も対処しなくても、ちゃんと自生している常緑植物が結構あるものです。 周りの自然を観察すれば、たくさんのヒントが隠されているようです。
